心疾患の既往を持つ方のトレーニングは、有酸素運動を主に行い負荷の強い筋力トレーニングは避けた方が良いといった印象を受けている方が大半かもしれません。しかし、筋力トレーニングは、心疾患の再発防止や心理的なストレス軽減に対して良い効果が期待できます。今回は、心血管にリスクを持つ方が筋トレ(レジスタンストレーニング)を必要な理由と注意点について紹介していきます。
レジスタンストレーニングの効果
筋トレというと筋肉をつけるだけのイメージがありますが、他にも様々な効果が期待できます。アメリカで権威のあるアメリカ心臓協会(AHA)では、レジスタンストレーニングの効果を以下の内容で述べています。
- 筋力、持久力の増加
- 徐脂肪体重の増加(体脂肪の減少)
- 基礎代謝の増加
- 骨密度の改善
- インスリン感受性の改善
- バランス機能の改善
- 呼吸(補助)筋機能の改善
- 腰痛や骨粗鬆症、肥満などの慢性疾患の予防や管理
- 糖尿病の予防や管理
- ADL(日常生活動作)能力、QOL(生活の質)の改善
Resistance Exercise in Individuals With and Without Cardiovascular Disease:2007 Update:A Scientific Statement From the American Heart Association Council on Clinical Cardiology and Council on Nutrition,Physical Activity,and Metabolism.Circulation 116;572-584;2007
筋力、筋持久力をつける事は心血管の負担を軽減する上でも特に重要な要素です。また、心疾患に合併症として多い糖尿病の予防や管理にも効果があります。
心血管疾患がある方のレジスタンストレーニングの実施方法
アメリカ心臓協会(AHA)と日本心臓リハビリテーション学会が指針として出している内容を抜粋すると以下の内容になります。
- Frequency 頻度 :2−3セッション/週(連続は避ける)
- Intensity 強度:RPE(1 11-13,50%1RM(2から開始60-70% 1RM or 上肢運動は30~40%1RM、下肢運動は50~60%
- Type 種類:マシン、プーリー、ダンベル、フリーウェイト、自重運動
- Time 時間:それぞれの運動を1セット 10-15回を1−3セット
(1 RPE(rate of perceived exertion):自覚的運動強度6ー20で主観的負担度を数字に表したもので11ー13は、楽である〜ややきついの強度。
(2 1RM(Repetition Maximum):1度だけ挙げる事ができる最大挙上重量のこと。
連続でのトレーニングは身体への負担が強い為、トレーニングした翌日は、休息日にするか軽めの有酸素運動に切り替える必要があります。
負荷が上がり過ぎないための準備と強度監視
- 準備運動を行い、最初から過剰な負担は避ける。
- 大きな筋群をエクササイズする。
- 過剰な血圧上昇を招く可能性がある為、グリップは軽く握る。
- 呼吸を止めない。力を入れて重量物を上げる際や動作する際には息を吐く。
- セット間には必ず休止期(90秒程度)をおく。
- 肘や膝は完全に伸ばさず、少し余裕を持たせる
- 正しいフォームで、活動させる筋を意識して運動する。
- 心イベントの徴候、めまい、不整脈、いつもと違う息切れ、狭心症の様な不快感が現れたらすぐに中止する。
準備運動なしでの負荷の強い筋トレは、健常人でも60%~70%の割合で心臓に負担をかけているとのデータも出ている為、5~10分程度の準備運動をする必要があります。筋肉だけでも血液を循環させるポンプ作用がある為、ポンプ作用が強い大きな筋肉を強化する事が推奨されています。呼吸を止めての運動は力を発揮させやすくなりますが心臓に負荷が強くなる為、動作の際には息を吐くなど呼吸を意識して運動することも重要です。
レジスタンストレーニングを避ける必要がある場合
- 不安定な冠動脈疾患
- 代償されていな心不全
- コントロールされていない不整脈
- 重篤な肺高血圧症(平均肺動脈圧55mmHg以上)
- 重篤で症状のある大動脈弁狭窄症
- 急性心筋炎、心内膜炎、心外膜炎
- コントロールされていない高血圧(>180/110mmHg)
- 急性大動脈解離
- マルファン症候群
- 活動性増殖性網膜症、中程度から悪化傾向にある非増殖性糖尿病性網膜症患者に対する高強度(80%1RM~100%1RM)の筋力トレーニング
上記の項目に該当する方は、筋トレは禁忌とされているので、注意して下さい。
まとめ
運動許可が医師から出ている場合は、目標心拍数や上限心拍数なども確認しておくと良いでしょう。一定期間であれば、医療機関で心臓リハビリを提供施設もありますが、医療保険の適応期間が限られているのが現状です。しかし、健康状態を維持する上では運動を続けていく必要があります。千葉市のパーソナルジムRelationsでは、疾患ベースでの運動プログラムも提供しているので、一人で運動するのに不安がある方のサポートも可能となっています。興味がある方は、是非チェックしてみて下さい。
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